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戸島甲喜さん(伝統的工芸品 木象嵌)

職人の手から生まれたものはいつまで使ってもその温もりは消えない

糸鋸ミシンで板を回しながらバラの型を切り抜く戸島さん

糸鋸ミシンで板を回しながらバラの型を切り抜く戸島さん。「何かに作らせてもらっている気持ちが意識的に出てきて、仕事場に入るときには香を焚きます」と。

 千葉県では伝統工芸品の一層の発展を図るため、1981年から優れた工芸品を伝統的工芸品として指定しています。京葉・東葛地区の伝統工芸師を訪ね、素晴らしい技を6回シリーズで紹介します。

戸島 甲喜さん

戸島 甲喜さん
1936年生まれ。1955年育英工業高等学校(現・育英高専)卒業。同研究室でイタリア木象嵌・工芸彫刻を始める。1959年木象嵌師・加茂守一氏の内弟子となる。1969~78年日本現代工芸展に出品。1972年北イタリアに1年間滞在。古典家具の修理・修復に携わる。帰国後、精力的に作家活動を展開。1996年千葉県指定伝統的工芸品に指定。2000年市川市民文化奨励賞受賞。2000年、2005年紺綬褒章受章。
住所/市川市北方1-4-2

 
 

木象嵌の箱

木象嵌の箱

「まるで絵のようなバラの木象嵌の箱。工程は、バラの花を描きトレーシングペーパーに写す→銀杏の木に前記のトレーシングペーパーを貼る→糸鋸で線の上を切り抜き、花びらのパーツにする→一枚ずつピンセットでつまみ、熱した砂につけて焦げ目を入れる→原木の板を彫り、花びらをボンドを付けながら埋める→表面を平らに研ぎワックスをかけ仕上げる。
  • ※作品は千葉県立美術館と市川市吉澤ガーデンギャラリーに展示。美術館では販売も。
市川の伝統工芸品
  • ◆飾り煙管・岩井三郎さん/煙管本体から装飾まで一貫し手作業で。葉巻入れや名刺ケースなど金属加工品も制作。
  • ◆行徳神輿・中台実さん、浅子周慶さん/前者は主に木地師として行徳大唐破風神輿をはじめ、各種の神輿を製造。後者は現代感覚に根ざした新しい行徳神輿づくりが特徴。
  • ◆江戸つまみかんざし・穂積実さん・和代さん/こまかく刻んだ色鮮やかな羽二重をつまんで作る江戸時代からの技法。和代さんは夫実さんから伝統技法を受け継ぐ。

木象嵌師と骨董品

楠(右)と屋久杉(左)に千鳥を象嵌した置物

楠(右)と屋久杉(左)に千鳥を象嵌した置物。

 木象嵌とは、木の板を彫り、異なる木を象(かたどり)、嵌(は)めこんで絵や文字、文様などを現わす特殊な木工技術の名称。古くは奈良時代に見られ、今も多くの優れた作品が正倉院に保存されている。はるか1千200年もの歳月を人から人へと受け継がれてきた貴重な伝統技術と精神であるが、現在、衰退の途にあり、戸島甲喜さんは生存する数少ない正真正銘の木象嵌師である。
 市川市北方、閑静な真間川沿いにあるアトリエを訪ね、中に入ると意外なものが目に付いた。それは、明治、大正から江戸期、さらに時代を遡ると思われる器のコレクション。壁の一画を埋め尽くし、中には欠けた破片を漆や鉛ガラス、金具を用い、今では知るべくもない技法で補修されたものもある。
 「これらに銘はありません。雑器です。けれど言葉ではない多くのものを教わりました」と戸島さん。無名の職人が暮らしに必要とされるものを伝承の技術と工夫の知恵で作り上げ、気に入った人が買い、壊れたら修理し大切に使われてきた証。おごることなく、作ることを喜びとする職人達の心意気がそこにはある。
 「僕もこういう風な作品を作りたい」。無名の先人が伝えてきた技と芸と心意気は、今、戸島さんの木象嵌に甦っている。

 

市井の芸術家へ

 戸島さんを木象嵌に運命づけたのは、東京の育英工業高等専門学校時代。イタリア象嵌に造詣が深かった教師フェデリコ・バッジョ氏に出会い、卒業後同氏について4年間イタリア木象嵌を学んだ。さらに日本の伝統木象嵌の第一人者加茂守一氏の弟子となり研鑽を積む。1972年には北イタリアに渡り古典家具の修復工房での実習経験も。
 日本と西洋の木象嵌を融合した独自の作品を世に問うべく、これまでに開いた個展は17回。公募にも積極的に出品し、千葉県知事賞、日本現代工芸展現代工芸賞など国内のほか、海外でも多くの賞を受賞。日展では連続5回入選を果たし、県立美術館には11作品が収蔵されている。
 輝かしい経歴を持ちながらもきっぱりと美術界を去った。「師匠にお前が最後だよと言われて伝承の技術を教わったのに、独りよがりで自分のものとして作っていた。伝統を受け継いだ精神に反している」と。
 市井の芸術家の道へー木象嵌の技術は1996年千葉県伝統的工芸品の指定となった。以来、伝統的工芸展や海外交流、小・中学生のアトリエ見学など地域に根ざした活動をしている。「私はただの仕事師です。作り続けてきたものが残されるかどうかは、次の世代の人々が決めることだと思っています」

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