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松本通男さん(伝統的工芸品 佐原太鼓)

太鼓の本物の音質を伝えたい。伝統の技法にこだわる理由です。

皮張りを調整した後、鋲を打つ松本さん。

皮張りを調整した後、鋲を打つ松本さん。

 和太鼓といえば祭りでおなじみですが、最近は創作太鼓の演奏も盛んになり、より親しみ深い楽器になりました。佐原市に工房を構える太鼓職人・松本通男さんは、原木選びや木の裁断・加工、皮の仕込みなど昔ながらの技法を用い、一貫して製作を行っています。伝統の技への熱い心意気を伺いました。

松本 通男さん

松本 通男さん
 1956年生まれ。先代、父・次郎さんの和太鼓づくりに打ち込む姿を見て育ち、17歳で本格的に家業に入る。早世した次郎さんの代わりに伯父・傳吉さんを師とし修行。大太鼓から鼓まで幅広く製作、音質ははやし連や奏者に定評がある。佐原ばやしの太鼓保存、普及にも努めている。1996年千葉県伝統的工芸品に指定。
住所/佐原市谷中967-1

 
 

玉切り(右)と製材(左)されたケヤキ。ケヤキ材はすぐに加工すると割れやすいため1年以上寝かせてから使う。

玉切り(右)と製材(左)されたケヤキ。ケヤキ材はすぐに加工すると割れやすいため1年以上寝かせてから使う。

完成品。胴中央のふくらみが大きいほど、余韻のある音になる。皮はクリームがかったきれいな色合い。塩漬け、ぬかの酵母菌による発酵、脱毛、皮すき、天日干しなど、仕込みの工程を経て化学処理では得られないにかわ本来の色に仕上がる。

完成品。胴中央のふくらみが大きいほど、余韻のある音になる。皮はクリームがかったきれいな色合い。塩漬け、ぬかの酵母菌による発酵、脱毛、皮すき、天日干しなど、仕込みの工程を経て化学処理では得られないにかわ本来の色に仕上がる。
佐原に伝わる伝統工芸
  • ◆佐原張子/鎌田 芳朗さん
     3代目の張り子細工師として50年。招き猫、だるま、干支など縁起物を和紙を重ね張りして作り続けている。ゴム仕掛けで動く首振り亀車やかに車などのおもちゃも好評。
  • ◆佐原ラフィア/石井 莊道さん
     手工芸用に仕上げたマダガスカル島産の椰子科の植物の葉でハンドバッグなどを製作している。日本におけるラフィア工芸の草分け的な存在であった母・かねさん(故人)の下で修行し2代目として活躍中。

音調整は感性が頼り

 佐原市は、利根川を背景に情緒溢れる落ちついた街であるが、関東三大祭りとして知られる夏と秋の大祭には一変、「佐原ばやし」の太鼓が水郷に鳴り響き大勢の人でにぎわう。
 「伝統の祭りを支えるのも使命」と、この地に工房を構える松本通男さん。4代目として太鼓の道一筋に34年、原木の選定、胴づくり、皮加工、皮張りまで一貫して昔ながらの技法を守り続けている。
 一般的に胴はケヤキが多く用いられ、大きさ、材質、ふくらみ具合の違いによって様々な音質を出すことができる。使い手の要望にこたえるというのが松本さんの信条だ。
 工房を訪ねると皮張り作業の真っ最中。ケヤキの木目も美しい1尺7寸(口径約56センチ)の胴にのせた皮を、ロープで台座(ジャッキ)に連結。「ドーン、ドーン」とばちで叩いては、ロープを少しずつ締めていく。
 「子どものころから工場(こうば)で遊び、太鼓の音は植え付られているからね」。その感性を頼りに聞き耳を立てる。時には、後継者の長男・崇さんに叩かせ、工房から遠く離れて音質を確かめる。
 「太鼓の音は打って良くなるもの。使い始めてから3年ほどで本来の音になる。その最高の状態が10年、20年と続くように計算して張りを調整しているんです」
 張りたてはトン、トンという上がり調子の音、使い込むほど心地よいドォーンと横に走る音に変わる。最後はドンと音が沈み、張り替え時を迎える。

 

完成まで3年の歳月

 こうした太鼓の歴史を知る手がかりが胴の内側に書かれた製造年月日と作者名。15年ほど前、松本家の屋号・傳兵衛作の太鼓が修復された。天明(1781~1788)の年号と共にその名が記されていたという。
 署名は後世に伝える作家の自信作の証。数多くの名を刻んできた松本さんが、全行程にこだわりを持つ所以はそこにある。
 ケヤキの仕入れや1年間乾燥させた丸太の加工、赤牛皮の仕込み(ぬかで発酵・天日干し)など、原材料の収集や下準備は今が最盛期。空気が乾燥する冬ならではの作業に余念がない。
 「原木を寝かせ、成形してからも自然乾燥に時間がかかる。材料を手に入れてからお金になるまで3年はかかる商売」と苦笑する。「でも、太鼓の本物の音を知ってもらいたいですからね。手間暇は惜しみません」
 とりわけ原木の裁断(木とり)は難しい作業。木は割れたり、傷があったり色々で、いかにそれを避けるかが腕の見せ所。使うチェーン・ソーの重さは30キロ。「そろそろ体が大変になってきた」という松本さん。修行中の崇さんが荒削りした太鼓に目を細める。
 「人に良く言われるんです。太鼓づくりを辞めたら佐原ばやしはなくなるよってね」